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医療機器を巡る市場環境

医療機器は、世界的に市場が拡大しており、我が国の今後の成長を支えるリーディング産業として期待されています。一方、国内市場をみれば輸入超過で推移しており、国内産業としては十分な競争力が発揮されていない状況です。

日本における医療機器の市場規模|過去最大の規模に

我が国の医療機器市場規模(国内売上額)は平成16年以降増加し、平成26年は過去最大の約2.8兆円となりました。対前年伸び率は年によって増減していますが、平成6年から26年までの平均伸び率は約3.0%であり、景気の影響を受けにくい安定市場と言えます。市場規模は国民医療費の約6%強で安定しています。

輸出入の状況|国内市場は依然輸入超過

わが国のものづくり企業は医療機器に活かすことができる高い技術を有しているにもかかわらず、現状の国内売上額(2.8兆円)に占める輸入額の割合は49%であり、輸入超過で推移しています。欧米主要メーカーが医療機器と医療サービスをパッケージとした積極的な海外展開を推進する中、日本は遅れをとっていると考えられます。

研究開発投資|外資系企業は海外で研究開発

日本の医療機器企業の研究開発費は売上高の6%前後を推移しており、1社あたりの研究開発費は約4.1億円となっています。外資系企業の値は低く、その多くが海外で研究開発を行った後、最終製品として輸入する傾向があります。

研究開発人材|研究開発人材ボリュームは変化せず

医療機器産業の「研究開発人材(研究開発部門の従業者)」が全従業員に占める割合は約13%であり、平成20年から24年にかけて大きな変化は見られません。医薬品産業と比較すると、研究開発人材の割合は少ない一方、製造人材の割合が高いことがわかります。

医療機器産業の競争力比較|米欧と中韓の狭間

科学技術振興機構では、医療機器である「診断機器」「治療機器」に加え、周辺分野としての「介護・福祉機器」、最近特に製品開発が活発な「ウエアラブルデバイス」、これら多様な機器の実用化と普及のために必要な科学的手法である「レギュラトリーサイエンス」の5つの領域について、基礎研究から産業化に至る競争力を日本・米国・欧州・アジアについて分析したレポートを発表しています。ここでは、同レポートに記載された日本の競争力分析を記載しています。

診断機器

フェーズ 日本の現状に関する言及
基礎研究
  • ●CTや超音波、内視鏡などの既存モダリティの研究開発は応用研究が中心であり、センサなどの大学研究機関での基礎研究も散見されるが裾野はそれほど広くない。しかし、PETや光学系のセンサ、分光診断技術、標識薬剤などは放射線医学総合研究所や理化学研究所、企業では浜松ホトニクス社などで世界トップクラスの基礎研究が行われている。また、大学は化学合成やタンパク質分析などの研究には強みをもっている。
  • ●総じて、大学は医用工学の研究人材が不足しており、大学発のシーズは米国に比べて十分ではない。
  • ●企業の基礎研究に対する取り組みは弱い。画像診断機器・検査機器企業と製薬企業との基礎研究における連携の取り組みも、欧米企業に比べて大きく劣っている。
応用研究・開発
  • ●既存の装置・モダリティをベースにした改良研究や臨床応用研究、アプリケーションの開発は活発である。
  • ●一方で、大学発の新規技術シーズに基づくプロトタイピングを行い、臨床応用可能なレベルの「形にする能力」が欧米に大きく劣る。このため、よい技術シーズはあっても、結局海外ベンチャーに先を越されてしまうことが多い。そのためのグラントなどの支援が不十分であることも一因。
  • ●基礎研究を実用段階まで引き上げる仕組みが依然課題であるが、近年、COI STREAMなどの拠点形成プログラムにより、産学連携でのトランスレーション(橋渡し)の加速を推進する取り組みが検討されている。
産業化
  • ●CT、内視鏡や質量分析装置などは国内企業が強みをもつが、資本力に劣る国内メーカーは大きな開発投資を伴う新商品開発には慎重であり、事業機会を逸してしまう場合が多々ある。
  • ●異分野からの医療への進出が進んでいる。

治療機器

フェーズ 日本の現状に関する言及
基礎研究
  • ●大学は医用工学の研究人材が不足しており、大学発のシーズは米国に比べて十分ではない。このため、多くは企業が開発の中心となり、大学と共同研究を実施している。
  • ●総じて、個々の研究開発の水準は高い。特に手術用ロボット、次世代型全置換型人工心臓の研究水準は高い。
  • ●基礎から実用化までの体系的な取り組みが依然として課題で、十分に機能していない。国、地方自治体に医工連携関係の事業が興されると共に、工学研究者が中心となった「ものづくりコモンズ」や「NPO医工連携推進機構」が設立され医工連携の強化に努めている。
  • ●治療機器関係学協会の動きとしてはアジア、環太平洋の各国の基礎研究サポート、日本を中心としたアカデミアネットワークの構築のためにアジア太平洋人工臓器学会が設立され、中国、韓国、台湾、シンガポール、豪国、マレーシア、タイ、インドが参加している。
応用研究・開発
  • ●大学病院などの国内有数の臨床研究拠点は海外メーカーの装置を導入することが多く、臨床から技術開発にフィードバックするための仕組みが十分に構築できていない。
  • ●政府の成長戦略や医療イノベーション戦略の策定などを背景に治療機器の開発の機運も高まりつつある。
  • ●国、地方自治体の施策による「ものづくり」中小企業の本分野参画も進みつつある。
  • ●重粒子線治療装置やホウ素中性子捕捉療法などのがん治療機器、日本のお家芸ともいえるロボット技術を活用した手術支援ロボット、基礎研究は進んでいるが産業化が遅れている人工心臓などの機能代替装置の更なる研究開発の加速が必要である。
産業化
  • ●依然として治療機器は輸入超過である。
  • ●薬事法等の一部改正により、法令的に遅れていた医療機器の特性を踏まえた「医療機器」規制の構築が行われつつある。
  • ●医療機器の開発や審査の円滑化に資する評価指標および開発ガイドラインの策定が順調に進められているが、手術支援ロボットなどの先進的治療機器に関しては、治験によるガイドラインへのフィードバックが必要であるためその規制に関しては更なる検討が必要。
  • ●医療機器市場2.7兆円(平成25年)のうち、53%を占める治療機器は依然輸入超過。約1,600億円の輸出額に対し、輸入額はその4倍超の約7,600億円である(H25)。また治療機器分野の市場規模は5年前に比較し約20%増加。

介護・福祉機器

フェーズ 日本の現状に関する言及
基礎研究
  • ●ICT、IRTについては、当該領域の研究が盛んになされている。
  • ●MEMSやナノテクノロジーなど、先端技術の開発では、技術主導ではあるが応用範囲として介護福祉機器領域が掲げられている。
  • ●BMIに関する研究は各所で積極的に行われている。
  • ●高齢者の聴覚や視覚の特性データが公開され、開発に資する更なる基礎研究も進められている。
応用研究・開発
  • ●ロボット介護機器の大きなプロジェクトが進められており、これまでにない規模で、開発が進められている。
  • ●厚生労働省障害者自立支援機器等開発促進事業やニーズ・シーズマッチング事業など実用的な機器開発が進んでいる。
  • ●国レベルのプロジェクトの影響もあり、地域での開発事業が展開されており、更なる広がりも期待できる。
  • ●2020年の東京パラリンピックに向けて、技術開発や環境整備を促進する動きが見られている。
産業化
  • ●ユニバーサルデザイン製品は、規格や基礎データが整備され、市場も拡大している。
  • ●ロボット介護機器や自立支援機器は、開発助成を受けたものが製品となり市場に出てきている。今後の定着についてその動向が注目される。
  • ●ロボット介護機器については、給付対象としての検討がなされており、これが実現されれば、産業化の促進要因となる。

ウエアラブルデバイス

フェーズ 日本の現状に関する言及
基礎研究
  • ●大学を中心に、世界をリードする医療計測を目的としたデバイス技術が進んでいる。
  • ●アパレル、眼鏡などの異業種や材料企業などウエアラブルデバイスに関する基礎研究を進めている。
  • ●医療ウエアラブル機器に関する国家的なプロジェクトがなく、また通信や総合的なシステム化について、世界を先導する基礎研究が十分ではない。
応用研究・開発
  • ●JSTではERATOにて、「前中センシング融合プロジェクト」や「染谷生体調和エレクトロニクスプロジェクト」27)が、またCRESTにて「プロセスインテグレーションによる機能発現ナノシステムの創製」28)内でウエアラブル機器やその研究開発が行われている。
  • ●ウエアラブル環境情報ネット推進機構26)が日本企業(NTTグループ、セイコーエプソン、オムロン、デンソー、クラレ、旭化成、村田製作所など)と共に、ウエアラブル機器関連として「バイタルケアネットプロジェクト」、「人体通信プロジェクト」などを展開している。
  • ●文部科学省地域イノベーション戦略支援プログラム(けいはんな学研都市ヘルスケア開発地域)「無意識生体計測&検査によるヘルスケアシステムの開発」プロジェクトにて、生体計測技術と機器開発が行われている。
  • ●総務省地域ICT利活用広域連携事業として「センサ活用のICT地域高齢者健康管理/遠隔医療支援事業」がウエアラブル環境情報ネット推進機構にて展開している。
  • ●市販用のメガネ型端末として、ソニーは「SmartEyeglass」を、NTTドコモは「インテリジェントグラス」の開発を発表しており、医療ヘルスケア用への応用も可能である。
  • ●医療機器メーカーやベンチャー企業での研究開発が欧米に比して活発でない。
産業化
  • ●東芝では、心電位、脈波、体動、皮膚温を測定する皮膚貼付型センサ「SilmeeTM Bar type」を製品化し、大学・研究機関・企業向けに国内で販売を開始している。
  • ●セイコーエプソンでは小型デバイス技術を利用し、ランニングに用いる腕時計型デバイスやゴルフクラブ型のトレーニングデバイスを開発販売している。
  • ●ソニーはリストバンド型端末「SmartWatch」を販売しており、スマートフォン端末との連携により医療・ヘルスケア応用などの展開の可能性を有する。
  • ●セイコーエプソンは眼鏡型のウエアラブル端末「モベリオ」の販売を開始し、ゲームのほかスポーツを含む幅広い利用法を提案し、ソニーでは医療機関用として、内視鏡手術向けに3Dヘッドマウント・ディスプレイ(ゴーグル形状)を開発している。
  • ●「派手さを好まない日本の国民性」があり、日本の消費者に合わせる製品化、そして世界市場を念頭においた事業が進んでおらず、固有技術はあるものの米国企業(Google、Appleなど)に誘導されて、後追い的な商品開発が多い。

レギュラトリーサイエンス(医療機器)

フェーズ 日本の現状に関する言及
制度検討など
  • ●2014年5月に成立した健康・医療戦略推進法において、国が積極的にレギュラトリーサイエンスを推進することを規定。
  • ●2013年11月には薬事法の改正が成立し、医療機器や再生医療については、技術の特性を踏まえた規制を構築することを規定。
研究の推進など
  • ●2013年6月、内閣により日本再興戦略の中で、健康・医療に関しての戦略を策定。
  • ●2011年8月からの第4次科学技術総合基本計画(2011年から5か年)において「ライフイノベーション」を推進する方策としてレギュラトリーサイエンスの充実・強化を記載。
産業動向
  • ●医療機器の承認や審査については、独立行政法人医薬品医療機器総合機構が、人員の増強や相談制度の拡充などに努めてきている(2008年から推進されてきた「医療機器の審査迅速化アクションプログラム」など)。
  • ●審査期間の短縮には成果を上げてきているが、改良機器や後発機器の審査、申請の数の増加などには更なる改善が期待される。

出所:科学技術振興機構 研究開発の俯瞰報告書 ライフサイエンス・臨床医学分野(2015年)より抜粋

承認品目数の推移

薬事法第14条第1項の規定に基づき厚生労働大臣により承認を受けた医療機器の製造販売品目数の推移を下の図に示します。「承認」品目数は平成20年から平成23年にかけて減少していましたが平成23年以降は横ばい傾向にあります。他方、「一部変更承認」品目数は年毎の変動はあるものの増加しており、直近では承認品目数を上回っています。

登録認証機関による第三者認証品目数の推移

厚生労働大臣が基準を定めて指定する高度管理医療機器、管理医療機器または体外診断用医薬品を製造販売する場合には、品目毎に厚生労働大臣の登録を受けた者(「登録認証機関」)の認証(「第三者認証」)を受ける必要があります。登録認証機関による医療機器の第三者認証品目数の推移を下の図に示します。平成22年以降、最近まで「認証(新規認証)」および「認証一変(一部変更認証)」品目数は横ばい傾向であります。他方、「軽微変更」品目数は年毎に大きく変動しています。