医工連携の最前線 医療機器ビジネスに挑むパイオニアたち


医療機器開発を支える医工連携プラットフォーム
埼玉県産業労働部
先端産業課

医工連携・産学医連携を促進するため、医療イノベーション埼玉ネットワークを構築し、開発者に寄り添った支援を行う。

先端産業創造プロジェクト
-医療イノベーション分野-
概要

全体背景・目的

平成26年度から、埼玉県では、大学・研究機関等の先端的な研究シーズと企業の優れた技術を融合させ、ナノカーボン、医療イノベーション、ロボット、新エネルギー、航空・宇宙の5分野を重点に、実用化・製品化・事業化を強力に支援する「先端産業創造プロジェクト」を推進している。先端産業への参入から事業化まで一貫して支援することで、企業の「稼ぐ力」を高めるとともに、先端産業の県内集積を目指している。

医療イノベーション分野

埼玉県は、医薬品や医療機器の生産額が全国で上位であること、医療機器と親和性の高いオプト(光学)産業を始めものづくり企業が集積していることなど、医療関連産業が成長するための高いポテンシャルを有する。本プロジェクトでは、医療機器開発などのイノベーションを促進し、埼玉県の強みを活かして医療関連産業の更なる集積を目指している。

埼玉県先端産業創造プロジェクトHP


事業内容

医療機器等試作品コンテスト

市場化を支援することを目的に
医療機器等の試作品を表彰する。

産学連携開発プロジェクト

大学や研究機関の先端研究シーズと
企業の技術力を結びつけた
研究開発を支援する。

展示会出展支援

医療機関や製販企業とのマッチングを
推進するため、開発製品や試作品の
展示会への出展支援を行う。

三者連携開発モデルの構築

製造業、医療機関、製販企業の三者が
連携して進める、現場ニーズを反映した
真に「売れる」製品開発モデルを構築する。

新技術・製品化開発費補助金

企業等が主体となって行う
実用化・製品化のための
開発を支援する。

海外認証等取得支援

海外での取引に必要となる
認証等を取得するための
経費の一部を補助する。

参照:埼玉県先端産業創造プロジェクトリーフレット

支援の特徴01 医療イノベーション埼玉ネットワークと専門コーディネーターによる支援

埼玉県とさいたま市は、医療機器等の関連企業や大学、研究機関、新規参入を目指す企業などが参画する「医療イノベーション埼玉ネットワーク」を共同で設立、運営している。本ネットワークは、県と市が連携し、医療関連産業のさらなる振興・集積につなげることを目的に、医療機器開発セミナーの開催や、各種支援、会員の相互交流の場の提供などを行っており、現在、「産・学・医」合わせて約350機関が参加している。

同ネットワークを活用した活動の一環として、公益財団法人埼玉県産業振興公社が実施主体となり、製販企業、ものづくり企業が医療現場に赴き、医師から現場のニーズを聞く「医療現場ニーズと企業のマッチング」を行っている。医師による現場ニーズの発表後、参加企業に対して「自社が現場ニーズにどのように貢献できるのか」をアンケートで収集し、その結果を元にして製販企業、ものづくり企業、医療機関のマッチングを実施する。現場のニーズ起点だけでなく、大学の研究シーズを集め、企業に紹介する「大学シーズと企業のマッチング」も実施している。これらのマッチングは、同公社に所属するコーディネーターが仲介しており、マッチング後は、研究開発の進捗についてもアドバイスしている。

現在、同公社には先端産業創造プロジェクトの重点5分野で19名のコーディネーターが在籍しており、そのうち7名が医療機器の専門家である。7名それぞれが、申請や治験、技術開発といった異なる専門性を有している。開発の各段階において、7名の中から各種課題の解決に適した専門性を有するコーディネーターがアサインされ、適時適切なアドバイスができるシステムである。

支援の特徴02 「医療機器等試作品コンテスト」による事業化支援

埼玉県では、2015年から、医療機器・福祉機器等の試作品をコンテスト形式で募集・選定し、市場化を支援する「医療機器等試作品コンテスト」を開催している。本コンテストでは、優秀者に「補助金」ではなく「賞金」を授与している。その賞金規模(実績値)は、グランプリで500万円、準グランプリで300万円、アイデア賞は200万円である。企業に「稼ぐ力」をつけてもらいたいという想いを実現した、全国でも珍しい「試作品」にスポットを当てたコンテストである。

従来、埼玉県が実施していた「補助金」は、技術開発や試作品開発を支援するもので、その使途は限定されていた。しかし本コンテストの「賞金」は使途を定めておらず、承認申請に係る費用や市場調査等、早期事業化のために必要な目的で企業が自由に利用できる仕組みとなっている。担当者は、「医療機器の事業化には開発費以外にも多くの費用が発生し、その費用が事業化を妨げる要因となる。賞金を足がかりに、早期事業化を実現してもらいたい。」と話す。コンテストの本選は、試作品の展示会も兼ねており、入賞を逃した試作品も展示会に来場した製販企業等から声がかかることもあり、マッチングの場としても機能している。


現MakeWay合同会社 代表社員

平成27年度 医療機器等試作コンテスト 準グランプリ受賞
細胞シート移植デバイス
(オカモト株式会社、東京女子医科大学)
平成28年度 医療機器等試作コンテスト グランプリ受賞
消化器内視鏡用鉗子操作支援ロボット

前田氏がコンテストを知ったきっかけは、当時研究員をしていた東京女子医科大学内に貼られた2015年度の第一回コンテストのポスターを見たことだった。見た瞬間に当時開発していた機器(再生医療支援用新規デバイス)で応募することを決めた。第一回コンテストへ参加し、その時はグランプリを逃したが、その独創的で特徴的なコンテストに魅力を感じ、第二回が開催されるのを心待ちにしていたという。

コンテストに惹かれた理由は、製品ではなく試作品に焦点が当たっているという趣旨のユニークさだった。医療機器産業は、規制対応やコスト等により、新規参入者にとっては最初の製品を生み出すこと自体が厳しい分野である。そのため、試作の段階で医療機器分野において著名な有識者からなる審査員の先生方に、当該試作品に関する提案書(エントリーシート)や試作品(現物)を評価してもらえる機会は、この上なく魅力に感じた。第一回コンテストでは、審査員から「こういったデバイスがないと再生医療も進歩しない。目の付け所が良い。」と高い評価を得た。前田氏は、「それまで迷いながら進んできた道を応援してもらい大きな励みとなった。第二回でも、審査員の先生方から自分達が気づいていなかったビジネス上のリスクをご指摘しただき、コンテスト参加自体がとても有益だった。」と振り返る。

当然、500万円の賞金も大きなインセンティブとなった。第一回コンテストで準グランプリを受賞した試作品は、前田氏が大学の研究員として、企業と共同開発したものであった。第一回コンテストで得た賞金は、その後にMakeWay合同会社を立ち上げるための資本金となった。第一回の賞金によって、「消化器内視鏡用鉗子操作支援ロボット」開発のための土台ができたのである。結果として、第二回コンテストでは、見事グランプリを受賞した。第二回コンテストの賞金は、大量生産を見据えた試作品用の金型作成、モーター開発のために利用し、より実用化に近づいたという。コンテストが、2度に渡り医療機器開発を加速させるためのトリガーとなったのだ。2017年末発売を開始する予定であり、最終的にはCEマーク取得による欧州進出、及び特定保健材料としての保険償還を目指している。

今後の事業

医療機器の開発者は、それぞれ事業化に向けたビジョンを持っているが、通常規制対応やコストといったハードルが、医療機器開発の各段階で現れる。埼玉県としては、「埼玉県産業振興公社と連携しながら、医療機器開発のプロセスで次々に現れるハードルをシームレスに支援できる体制を整えていきたい。」という。
企業支援においては、支援に対する企業のニーズを聞くことも重要だと考えている。例えば、「医師の声を聴く」ことについて企業からの要望は大きい。ただし、医師に対して「ニーズを出してください」というだけでは、協力を得るのは難しい。そこで、医師の本音を引き出せるよう、埼玉県や埼玉県産業振興公社が積極的に医師とコミュニケーションを図り、事業に対する理解を深める努力を行っている。医療現場のニーズと企業のマッチングにおいてもコーディネーターが仲介を行い、橋渡しを強化していく。産業振興が目的であるため、企業の要望と県としてできる支援をすり合わせながら、より良い事業を作っていくという。

企業へのメッセージ

『医療現場の紹介は、埼玉県や埼玉県産業振興公社という「行政機関」への信頼が最も発揮できる場面だと考えています。企業の皆さんのニーズに応えられるよう、また事業化を加速させられるよう、医療現場のニーズとのマッチングをはじめとする支援機能をさらに強化していきます。ぜひこの仕組みを積極的に活用して、医療機器開発を進めてください。』